「接遇のチカラ」(46) 「座談十五戒」から学ぶ~お世辞屋たるなかれ

松原里美(まつばらさとみ)

こんにちは!第2・4月曜日を担当するコミュニケーション講師の松原です。
コミュニケーションは相手ありき。そのために接遇のスキルを活かします。徳川夢声氏「話術」の「座談十五戒」から、このコツを学びます。
○第5戒 お世辞屋たるなかれ(P74~76)
あまり良い印象のない「お世辞」。ですが、徳川夢声氏は「社交的の辞令ということで、けっして悪いものでありません」としています。ですが、注意もしています。「これも度を越すと、相手を喜ばせるどころか、反対にいやがられて、敬遠されるようになります」
 先日、そうだなぁと感じたことがありました。日頃からたくさんの営業先を過密スケジュールでまわる業者さんの訪問です。この日は暑さもあり、その表情も疲れていました。対して、迎え側の私は余裕がありました。業者さんは、私と会った瞬間こう始めました。
 「いやぁ、お忙しい中ありがとうございます。とってもお忙しいのに時間をいただけて。ほんと、とっても大変ですよね」
 私は少しイラっとしました。「本当は私が忙しいと思ってないよね。自分の方が忙しいって言いたいのでは?」と嫌味に感じたのです。
 相手への尊重の伝達は、コミュニケーションの第一歩です。ですから、夢声氏も「ある程度まで、自分の本心を偽って、社交的辞令を使用することは、必要であります」と述べています。先ほどの営業さんは、相手を大切にしなければ!と思ったのでしょう。ですが余裕と見てとれる相手に「忙しいですよね」と繰り返しては、偽りの本心だと見抜かれてしまいます。良かれと思った言葉も、使い方の加減を間違えると不快感を持たれ、夢声氏のいう「度の強い『お世辞』」になってしまうのです。
 せっかくなら、「相手にけっして『世辞』なることを覚らせ」ない「世辞の名人」を目指しましょう。お世辞はコミュニケーションの潤滑油です。使いすぎお世辞屋さんに出会ったら、反面教師にしてみましょう。そこで「良い加減」を考えてみてくださいね。
 次回の「毒舌屋たるなかれ」で、悪口の加減を考えます。

※「話術」(新潮文庫) 著者:徳川夢声 新潮社
(1947年に秀水社から出版されたが、2018年に新潮社より復刻)

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この記事を書いた人

研修講師、地域密着ワークショップファシリテーター
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