「接遇のチカラ」 (22)良かれと思ってやったのに~思っていても伝わらない

松原里美(まつばらさとみ)

こんにちは!第2・4月曜日を担当するコミュニケーション講師の松原です。
 今、このコラムの副題に「思っていても伝わらない」を掲げています。相手への思いやりをどんなに持っていても、伝わらなければ残念な結果となることがあるからです。今回はそのような例を取りあげます。

 Aさんの所属している部署には接客と後方事務の仕事があります。業務全体を把握する狙いで、職員は日によって接客と事務を交替で行います。Aさんは、そのシフトを組む担当でした。
 後輩にちょっと繊細なBさんがいます。彼女は接客業務の日には「しんどいなー」「ミスが怖いな」と愚痴をもらします。AさんはそんなBさんの事が心配でした。そこで「Bさんのシフトを事務中心にすれば、彼女は安心できる!」と思いつき、独断でシフトを決めました。
 シフトを受け取ったBさんは、日を追うごとに暗い表情になっていきました。その様子がAさんには「せっかく嫌いな接客を外したのに何故なんだろう?」と不思議でなりません
 一方、Aさんの真意を知らないBさんは、疑心暗鬼になっていました。
 「なんで接客を外されたんだろう?使えない奴って思われてる?職場のみんなに嫌われてる?」
 そうなると周りの人の一挙一動が気になり、どんどん委縮してしまいます。そしてチームのバランスも崩れ始めました。
 上司はBさんを面談しました。そこで聴きとられた彼女の気持ちを知ったAさんは愕然としました。
 「良かれと思って組んだシフトが彼女を傷つけていたなんて…!」
 Aさんがシフトの意図をBさんに伝えていたらこのような展開にはならなかったし、むしろ、それをきっかけにBさんの業務改善もできたはずです。まさに「思っていても伝わらない」のです。
 
 コミュニケーションには相手への思いやりが必要です。さらに、その気持ちは相手に伝えなければなりません。信頼関係は一方通行ではなく双方向で成り立ちます。「思っていても伝わらない」を常に心に留めるようにしていきましょう。

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この記事を書いた人

研修講師、地域密着ワークショップファシリテーター
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