『五輪書』「水の巻」で、本論に入るにあたり、読者に読み方について注意している部分の一節です。書かれたものを読むだけでは、武蔵が説く兵法が分かるわけはありません。習おう、真似をしよう、という気持ちでもいけません。「即我心より見出したる利」、つまり書いてあることを「自分が見出した理法だ」と思えるまでに納得、実感できるように読め、ということです。
これは何事においても、学ぶための大きな心構えでしょう。「あの人がこう言ったから」「あの本にこう書いてあったから」という他人に寄りかかった気持ちでは、知識も技術も身に付かず、結局は偽物、借り物で終わってしまいます。本当に自分のものにするための努力、工夫が必要なのです。
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