ファシリテーションの基礎スキル 傾聴(5)

水江 泰資(みずえ ひろよし)

 こんにちは!毎週水曜日を担当する水江 泰資(みずえ ひろよし)です。
 本エッセイでは、少人数の打合せや会議運営で役立つファシリテーション・スキルを紹介しています。
 前々回より質問スキルを紹介しています。質問は、相手をもっと深く知りたい意図を持ち、行為では「訊く」と表現され、傾聴をより深める効果もあります。
 今回は『過去質問』です。過去質問とは、すでに行動したことや存在するもの、出来事の結果など、過去の事象について問いかけを行い、そうなった原因や理由、事実を明確にすることです。
 また、「今、何を考えている?/どんな気持ち?」などの問いかけは、現在の思考や感情を訊いており、それらはすでに生じているものですから、過去質問として扱います。
 事例として、商談がうまくいかなかった営業部のAさんに、先輩社員Bさんが問いかけている場面です。
・B「Aさん、今、どんな気持ち?」
・A「やっちゃった… 後悔で一杯です」
・B「やっちゃったって思ったのはいつかな?」
・A「製品担当のCさんに、見積内容を報告した時です…」
・B「我が社に不利な条件だと気づいたのは、自分で? それとも
Cさんの指摘で?」
・A「Cさんの指摘で気づきました…」
・B「Cさんはどんな指摘をしたの?」
・A「この項目、原価割れじゃないか、って…」
 過去質問は、直近の時間から順を追って遡っていくのがコツです。
例えば、「君は新人研修で何を学んできたの?」と事例の場面と時間的にかけ離れた問いかけをすると、それが批難叱責のニュアンスを帯びてしまい、相手を混乱させ原因解明が困難になります。今起こっている事態とは無関係な昔の出来事に言及して、相手を追い詰めないようにしましょう。
 職場で過去質問を上手く使えば、失敗だけではなく成功した場合にも、その原因を時系列で探れますので、改善策や新たなアイデアを得られる効果が期待できます。
 次回は『未来質問』を紹介します。

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この記事を書いた人

研修講師、国際認定ファシリテーター

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