こんにちは!毎週水曜日を担当する水江 泰資(みずえ ひろよし)です。本エッセイでは、少人数の打合せや会議運営で役立つファシリテーション・スキルを紹介しています。
前回までは、基礎となる考え方(思考法)を紹介しました。
今回からは皆様の職場で活用できる具体的なスキルを紹介していきます。
特に重要なスキルは「傾聴」と「質問」であり、最初に言葉の定義をしておきます。このふたつには、日本語ならではの興味深い関係性があります。それは、両方とも「きく」という言葉で表現されているのです。
「傾聴」の「きく」
私たちが音声を感知する状態の「きく」を以下のように表現してみっつに分けてみましょう。その中で、傾聴は「聴く」に相当します。
・「聞こえる」 意識しなくても聴覚で感知する
・「聞く」 聴覚情報に意識、注意を向ける
・「聴く」 人の言葉を聞く際、特にその人の心身の状態に関心、注意を払う
「質問」の「きく」
そして、日本語の「きく」は、質問するという意味も持ちます。
・「訊く」 相手についてもっと深く知りたいという意図で質問をする
「訊く」が使われる言葉に、「訊問(尋問)」があります。テレビドラマ等での裁判や警察の取り調べのイメージが強いかもしれません。しかし、「訊く」は、相手を追い込むことだけではなく、もう少し広く、相手に対する関心として表現される言葉です。
加えて、相手についてよく知るためには、相手の話を聴いて、適切な質問をする力も大切です。その意味において、「訊く」は、本来「傾聴」スキルのひとつです。ただし、行動としては、音声の感知ではなく、自ら発信する要素が大きいため、本エッセイでは傾聴(聴く)とは分けて扱います。
次回は、傾聴のきく(聞こえる、聞く、聴く)について事例を挙げて解説します。
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