「接遇のチカラ」 (51) 「座談十五戒」から学ぶ~酢豆腐たるなかれ

松原里美(まつばらさとみ)

こんにちは!第2・4月曜日を担当するコミュニケーション講師の松原です。
コミュニケーションは相手ありき。そのために接遇のスキルを活かします。徳川夢声氏「話術」の「座談十五戒」から、このコツを学びます。
○第10戒 酢豆腐たるなかれ(P83~84)
酢豆腐とは落語から生まれた言葉で、知ったかぶりのことです。ある町に、いつも知ったかぶりをする若旦那がいました。その若
旦那を嫌な奴だと思っている若者が一計を案じ、若旦那に腐った豆腐を珍味だと偽って勧めます。若旦那は、知ったかぶりを発揮して「これは酢豆腐というオツなものだ」と言って食べ、若者に笑われるという話です。
ある職場に、こんな酢豆腐な人がいました。グループ会社数社で、オンライン会議をすることになり、zoomに詳しい人にホストを頼もうという話になりました。するとその人が「私は知ってる!」と自信満々に申し出たそうです。しかし、実はこの人はzoom会議参加の経験はありますが、ホスト役はやったことがありません。そして、設定に迷ったので後輩に声を掛けました。
「ちょちょっとやればいいんだろ?そこだけ教えてよ」。
素直に「分からないから教えて」と言えばいいのに…と、周囲からの失笑を買ってしまったそうです。
 また、酢豆腐にはもう一つタイプがあると、夢声氏は述べます。
「自分の知識を認めさせるため、極力発言の機会をねらっているから、他人の話を横取りする癖があります。」
誰かが話を始めたら、すぐに「私はね~」と、自分の話を繰り広げ、主導権を奪ってしまう。いわゆる会話泥棒です。夢声氏は「私なども多少その病癖があるようで、いやはや面目次第もありません」と反省しています。
 コミュニケーションはお互いの信頼で成り立ちます。酢豆腐では、信頼が失われます。分からないことは素直にそう伝え、知っているなら押しつけない。時折、自分も酢豆腐になっていないか、振り返りましょう。
次回の「賛成居士たるなかれ」では、イエスマンについて考えます。

※「話術」(新潮文庫) 著者:徳川夢声 新潮社
(1947年に秀水社から出版されたが、2018年に新潮社より復刻)

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この記事を書いた人

研修講師、地域密着ワークショップファシリテーター
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