ファシリテーションの基礎スキル 傾聴(8)

水江 泰資(みずえ ひろよし)

こんにちは!毎週水曜日を担当する水江 泰資(みずえ ひろよし)です。
本エッセイでは、少人数の打合せや会議運営で役立つファシリテーション・スキルを紹介しています。
先月より質問スキルを紹介しています。質問は、相手をもっと深く知りたい意図を持ち、行為では「訊く」と表現され、うまく活用すれば傾聴をより深める効果があります。
今回は『開いた質問』です。これは英語のopen questionの訳です。前回の「閉じた質問」が、問いかけに対して「はい/いいえ」で答えれば会話が完了するのに対し、「開いた質問」は答え方に制限がないものです。
この「開く」は、回答者がより深く考える、気づきを得る、やる気やモチベーションがアップするなど心の新しい扉が開かれるという意味が込められています。
 事例として、営業部の新人Aさんに、OJT担当の先輩社員Bさんが問いかけている場面です。
・B「Aさん、先週指示したC社への見積書はどう?」(現状を大まかに聞く)
・A「すみません、まだできておりません」(事実がつかめた)
・B「どうした?何か理由でも?」(責めない口調で理由を問う)
・A「実は要望がかなり厳しく、去年の2割引きでと…」(理由が分かった)
・B「それで悩んでいたのか。言いなりに値引きもできないけれど、お客の要望に添わないわけにもいかないよね」(状況を整理する)
・A「そうなんです、どうすればいいですか?」
・B「営業担当者として、Aさんはどうしたい?」(意思や考えを問う)
・A「2割引いたらうちの利益がなくなります。定価で作成したいです」(考えが分かった)
「どうすればいいですか?」と尋ねられての返答が、開いた質問の典型です。「定価で作成しろ」と指示したり「値引きしていいと思っているのか?」とクローズドクエスチョンをしたりしては、相手の自発性が発揮されないので注意しましょう。
また「営業(担当者)として」と加えることで、個人の意思ではなく組織に貢献する立場として考えるよう促します。
次回は、『沈黙を守る』を紹介します。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

研修講師、国際認定ファシリテーター

→プロフィールはこちら

目次