ファシリテーションの基礎となる思考方法 クリティカル思考(7)

水江 泰資(みずえ ひろよし)

こんにちは! 毎週水曜日を担当する水江 泰資(みずえ ひろよし)です。
本エッセイでは、少人数の打合せや会議運営で役立つファシリテーション・スキルを紹介しています。先月からクリティカル思考(CriticalThinking:批判的思考)を取り上げています。そもそもの前提や他の可能性を探る、また、思考の癖(バイアス)を是正する働きがあります。
これまで6つのバイアスを紹介しました(バックナンバーをご参照ください)
今回は「偶然性バイアス」です。
人は、偶然の事象に因果関係や法則性を見出そうとする性質があります。
たまたま起こった出来事について、「あのことがあったからこうなった」「やっぱり、あれをすればこういう結果になるのだ」と考えがちです。
例えば、トイレ掃除をした日に臨時収入があったとして、トイレ掃除をすれば金運があがる、と根拠なく結びつけることです。手っ取り早く心の収まりがつきやすいからですが、解決すべき本当の原因を見失う場合もあります。しかし、クリティカル思考を使えば、無意味な因果関係や法則に陥りません。
活用事例に、今回もある製造企業の宣伝部での会議を取り上げます。担当者Aさんが企画を主導し、主婦3名だけの試用データから販売決定した新製品XXの売れ行きが良くなく、反省会を開いています。
前回まで部員たちは、販売失敗をAさんの性格のせいにしたり(原因帰属バイアス)、自分たちの思い出しやすい情報で原因を考えたり(利用可能性バイアス)しましたが、そのたびにクリティカル思考を活用しバイアスの修正を行ってきました。
さて、意見も出尽くし議長がAさんに尋ねました。
「これに懲りずまた新企画に挑戦してみませんか」
するとAさんは「今回失敗したから、次も失敗に違いありません…」と気弱な様子。まさに偶然性バイアスがかかった状態です。
そこで、クリティカル思考の心得のあるEさんが述べました。
「XXは確かに失敗だが、だからといって次もダメと思い込む必要はない。今回の失敗と次の仕事を関係づけず、心機一転がんばろう」
他の部員からも「そうだ、みんなで協力してやろう」とAさんを励ます発言が相次ぎました。
クリティカル思考は今回で終了です。次回はポジティブ思考を紹介します。

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この記事を書いた人

研修講師、国際認定ファシリテーター

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