こんにちは!第2・4月曜日を担当するコミュニケーション講師の松原です。
前回は「信頼関係」の構築は、能動的な行動だけが手段ではないと、守秘義務を例に挙げてお話しました。今回は表情を取りあげます。
私は医療従事者の方とお話しする機会が多く、そこで良く質問されることがあります。
「『患者さんに接する時は、いつも明るい笑顔で』って指導されるけど、辛い気持ちを聞くと、つい一緒に涙がこみ上げてきちゃうんです。これってダメなんですよね…?」
泣くのはダメなのでしょうか?そして、「いつもニコニコ」していなくてはいけないのでしょうか?私は、泣くことにも、常に笑顔でいることにもNGと答えています。
医療従事者だけでなく、悩みや不安を持った方々に関わる人が持つべき心構えは「カウンセリングマインド」と呼ばれ、「共感」「傾聴」「受容」の三要素で構成されています。つらい時は、ただ話を聞いてもらえるだけで気持ちが落ち着きますよね。吐露の受け止めでもらえる安堵。それが信頼関係を育みます。
もし、つらさを吐露した相手がニコニコしていたらどう感じますか?状況によっては「この人は笑っている。わかってくれていない」と思うかもしれません。「いつも笑顔」がNGなのはこのためです。
それなら共感の表れで、涙が出るのはいいじゃない。そう思うかもしれません
ですが、医療従事者は患者さんを治し、サポートするプロフェッショナルです。患者から見たら、「めそめそしている」と頼りなく感じられてしまうかもしれません。ですから、泣き顔もNGなのです。
では、どうしたらよいのか?私は、表情は「真顔(まがお)」にしてください。とお伝えしています。人は何かに真剣に取り組んでいる時、笑みは消えます。視線もまっすぐになります。患者さんの話を真剣に聞き、状況を把握する。それをプロとして受け止める。この姿勢を示す表情こそ「真顔」なのです。
相手を受け止めるために、自分の立場を見つめ、表情も抑える選択をする。それも接遇のスキルです。