ハラスメント問題について考える(2)占部正尚

■ワンポイント・エッセイ
 ハラスメント問題について考える(2) 曖昧な現状
                   占部 正尚

 ある人物の行動・言動がハラスメントに該当するのか否かを判
断する基準は、窃盗や傷害といった明らかな犯罪と比較すると曖
昧です。また、ハラスメントも犯罪と判断され法廷で裁かれるケ
ースが増えていますが、係争事になるか否かの境界線も曖昧です。
 なぜ、ハラスメントが現代社会で大きな問題になっているのか
を考えると、原因のひとつにこの“曖昧さ”が挙げられます。
 そのため、誰かがハラスメントに相当するかもしれない行動を
とった際に、明確に注意したり改善を促したりする行為が難しい
場面も多く、問題をさらに複雑にしています。
 例えば、タレントの毒蝮三太夫さんがラジオ番組で、高齢の女性
たちに対して「小汚ねえババアだなあ」と毎日のように発言してい
ますが、セクハラ問題として取り上げられたことはありません。
 元プロレスラーのアントニオ猪木さんが、希望者の頬をバシーンと
平手で叩く行為に対して、叩かれた方はお礼を言い、パワハラとし
訴えることはありません。
 では、あなたの周囲で発生しているセクハラやパワハラと、前述の
二人の行為の違いを明確に説明できますか? おそらく、多くの方が
「信頼関係」や「自ら希望」といったキーワードを思い浮かべるで
ょう。
 しかし、納得感のありそうなキーワードにこそハラスメントの深刻
さが潜んでいるのです。


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