「接遇のチカラ」 (19) 行き過ぎた「自尊心」~思っていても伝わらない

松原里美(まつばらさとみ)

 こんにちは!第2・4月曜日を担当するコミュニケーション講師の松原です。
 よりよい信頼関係とコミュニケーションをつくるカギは自尊心の尊重であるとお伝えしています。そして、前回は他者だけではなく自分自身の自尊心を大切にしてください、とお伝えしました。
 ですが、自分は大切にされる「べき」だ、と思うあまり、他者とのコミュニケーションがうまくいかなくなることもあります。
 
 先日、病院の受付カウンターで職員に大声でどなり散らしている初老の男性を見かけました。どうやら書類の申込み方がよくわからなかったようで、彼はこんな風に言っていました。
 「俺は病人の年寄りなんだ!病院は患者を大事にすべきだろうか!もっと分かるようにしろ!もっと早くやれ!」
 
 また、別の職場ではこんなことがありました。40代のA子さんは20代のB子さんから、ある日突然、怒られました。
 「A子さんって、私への態度がみんなと違います!こんなだと、私、仕事できません」
 その理由を聞くとこう言いました。「年下にはもっと優しくすべきです!せっかく楽しく雑談しても、ろくに話を聞いてくれない。これじゃ仕事が楽しくならないです」
 
 これは、どちらも「私は大切にされる『べき』だ」と、相手に強要した出来事です。初老の方もB子さんも、その主張により相手に不快を与えました。自分の自尊心は大切です。しかし、他人に強いては信頼関係は築けません。自分の快は他人の快ではないのです。
 
 コミュニケーションは、やりとりの積み重ねです。そのやりとりが心地よいものであるほど信頼は強いものとなります。不快を与える「べき」の押し付けがないか、自分へ問うことも心がけましょう。それも「よりよい関係」への第一歩なのです。

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この記事を書いた人

研修講師、地域密着ワークショップファシリテーター
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