ハラスメント問題について考える(9)占部正尚

■ワンポイント・エッセイ
  ハラスメント問題について考える(9) 免罪符の存在
                                         占部 正尚

 数あるハラスメントの中で、パワーハラスメント(パワハラ)が
最も深刻です。なぜなら、セクハラを公然と肯定する発言をした人
は周囲から非難されることは目に見えていますが、パワハラについ
ては限定的にせよ肯定する人が意外と多いからです。
 近年は、スポーツの世界での選手に対する暴力問題、学校内での
いじめ問題、ビジネスの分野でのブラック企業問題など、パワハラ
がさまざまな“問題”として取り上げられています。
 しかし、一向に解決の兆しが見えてこないのは、「腕力がある、
組織内での地位が高い、実績を保有している」など、相手より優位
な立場にある人間が、パワーでねじ伏せて言うことを聞かせること
で、効率的に指示・命令が徹底するという一種の“力学”が働くか
らです。
 ただし、それだけであれば「民主的な社会では、パワーに頼らな
い理性的な指示・命令を心掛けよう」という理念を浸透させるのは
難しいこととは思えません。
 一番の問題は、パワハラを受けた本人、いわゆる被害者の中に
「厳しい指導を受けたからこそ現在の私がいる」と考える人が一定
の割合で存在することです。
 これによって、パワハラをしてしまった人間に「愛情があれば、
ある程度のパワハラは許される」という免罪符を与えることとなり
問題解決の糸口を遠ざけてしまうのです。

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