ファシリテーションの基礎となる思考方法(8)

水江 泰資(みずえ ひろよし)

 こんにちは! 
 毎週水曜日を担当します水江 泰資(みずえ ひろよし)です。
 本エッセイでは、少人数の打合せや会議運営で役立つファシリテーション・スキルを紹介しています。 
 その基礎となるのがロジカル思考で、それを活用したフレームワーク(思考の枠組み)をひとつずつ紹介しています。皆様のビジネスにお役立てください。
 今回は『プロスペクト理論』です。
 プロスペクト(prospect)とは、見込み、期待や予想を意味する言葉です。リスクを伴う状況での判断分析として、米カーネマン氏らが1979年に公表した論文のタイトル名です。同氏は2002年ノーベル経済学賞を受賞しました。
 人は、利益に対してはリスクを回避する傾向、つまり堅実な決定をします。一方、損失に対してはリスクの高い傾向、つまり負けが込むほど損失を取り返そうとし、一か八かのギャンブル性の高い選択をします。
 簡単に言えば、人は得することよりも、損することに敏感に反応します。
 その応用が『限定販売』『有効期限間近』の宣伝文句です。「早くしないと他の人に買われますよ…」「貯めたポイントが今月で無くなりますよ…」と聞かされたら、皆さんも「買っておかないと…」「使わないともったいない…」という気持ちになりませんか。
 この心理をうまく利用すれば、会議を活性化させられます。
 例えば、いつも発言者が決まっているような場合、発言を遠慮しがちな人への勇気を後押しする声掛けに使えます。
 「せっかくいい意見をお持ちなのに、黙ったままではもったいないですよ」
 「この会議で言わないと、次の会議ではこの件はもう議題にあがりませんよ」
 なお、損害を被った悔しさからすっきり立ち直るには、それの2倍以上の得する体験が必要だと言われています。そのためにも、会議の後、意見を出しておけば良かった、言わなくて後悔した、と思わせないフレーズは大変効果的です。(ここでは、プロスペクト理論のごく一部を取り上げています)
 次回は『ハイ・ロー・マトリクス』を紹介します。

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この記事を書いた人

研修講師、国際認定ファシリテーター

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